人生、難あり

若俳推し活備忘録

愛を乞う人・前編

タイトルを見ると何だかとっても文学的な感じがしますが、これは暗喩を兼ねております。

 

舞台の上から愛を乞う。歌って踊ってただひたすらに、愛が欲しいと切実に叫ぶ。乞う側はもちろん乞われる側も、なにかと心が擦り減ってゆく、悪名高き地獄の舞台。

わかる方には恐らくわかる、そんな舞台の忘備録です。

 

私が推しの出演舞台にせっせと通い始めることになるのは今年の1月からなのですが、何故かというと実はこの月、とある舞台に推しが出ていたからなのです。作品名は伏せますが、読み進めればだいたいわかると思います。

ちなみに私は当該舞台に関する知識を全く持たないポンコツなオタクでしたので、推しの出演が決まったことを知った当時は「ランキングとかよくわかんないけど、某くん出るから1回くらいは観に行こうかな」と、軽い気持ちで考えていました。なにせ本命ゲームの2.5次元舞台に関する新展開の情報は無く、所属劇団の本公演もそうそうしょっちゅうある訳で無い為、ちょうど身体が空いていたのもありました。ですがそのことを呟いた途端、舞台に詳しい旧友のひとりが、リプライを飛ばしてきたのです。

「あれはやめとけ。諭吉が飛ぶ」

確かに諭吉は飛ぶでしょう。公式サイトを見る限り、1番高いクラスのシートで1万以上はいくのですから。しかし友人は続けます。

「ただ観に行くだけなら別にいいけど、推しにトップを獲らせる為に観に行くんなら、話は別になるからね。何しろガチで札束使って殴り合う世界なんだから」

エエエエエエエ何ソレーーーーー!!!ランキングの為に札束使って殴り合うとか、ちょっと正直よくわからんよ!!!!!

ここで一気に私の中で当該舞台を観に行く気持ちは急降下しました。そもそも舞台のプロデューサーが個人的には嫌いな部類に入るのもあり、このプロデューサーがそういえば以前、別口のイベで「自担に人気が無いことを目の当たりにしたファンがそこからどれだけガッツを見せるか、それがある意味見ものでもある(超意訳)」といった発言をしていたのを見て、更に嫌悪が募ったというのもありました。役者の価値を推し量る上で、確かにそういう《贔屓の火力》が物差しになるのは理解してます。ただその格差を見せ物にされて、果たして舞台を楽しめるのか?その状況で板の上に立つ推しを観て、心の底から『いいものを観た』と言えるのか?

そりゃもうめちゃくちゃ悩みましたよ。推しの仕事は応援したいし、正直に言や芝居をしている推しをとにかく観に行きたい。しかし舞台を観に行った後で「聞きしにまさるクソ舞台だったわ!」と嫌な気持ちになるんだったら、観に行くべきではないとも思いましたし。何しろ私のTLでは「◯◯くんが例の舞台に出るんだってさ」「なんか可哀想」「せめて仕事は選んで欲しかったな〜」という呟きが、そりゃもうわんさと出ていたのですから。

今のご時世、時間と資金のやりくりをしながらせっせと舞台を観に行かなくても、推しの仕事は見届けられます。SNSをチェックさえすれば写真やレポが見られますから、家にいながら「推しくん頑張れ〜」と呟くだけで応援も出来ます。ブロマやパンフや円盤にしたって、通販を使えば手に入ります。

でもこの舞台に限っては、その応援はあんまり足しにはならないようです。チケットを買って会場に通い、ブロマやパンフを買い求め、そうしてせっせとはたいた資金を《応援》ポイントに還元し、見える形に変えていかねばダメみたいです。

 

まあ結局のところ「観に行かない」という選択肢など、はなからありはしなかったのですが。

 

今にして思えばその月たまたま貰える休みが多かったのと、マチソワの日が運良く休みに被ってたのがラッキーでした。とはいえ休みも限りがあるので、私はひとまず貰える休みの全てを舞台につぎ込むことにし、主宰先行でまず1枚、それから一般でとりあえず3枚チケットを押さえ、公式サイトのランキング更新を毎週つぶさにチェックをしながら、所持チケットに付帯しているポイントと物販利用で付帯してくるポイントと、公式サイトへのログインポイント、クイズに答えて貰えるポイント、更には特番視聴で貰えるポイントを数え、そのポイントをどの公演に放出するのが1番ベストか、毎晩必死に考えていました。

ちなみに当時、推しはなんとか1公演だけ《1位》に名前が挙がっていました。あとはちらっと10位以内に入っていたりはしていましたが、大半はほぼ圏外ばかり。それもそのはず、この舞台に立つキャストの方は2.5次元舞台で既に名前が売れてる方ばっかりで、出演作からして有名ですから、かなりのファンがついてます。対して推しは芸歴が浅く、名前もそこまで知られてません。熱心なファンが声がけをして推しに1位を獲らせる企画を立ててなければ、恐らく名前が挙がることなどなかったでしょう。幸いそうした有志の方の行動のお陰で推しは1位をキープし続け、そして舞台は遂に初日を迎えることとなりました。

 

ここで一旦、エントリーを分けます。

なお後編は当該舞台のざっくりとした感想と、それから私の推しに対する愚痴めいたものをつらつら綴ると思いますので、ご注意ください。

 

推しの挙動がクソ可愛い話

いきなり何を言い出すんだと思われるかもしれないが、私の推しは挙動がいちいちクソ可愛い。

とにかく可愛い。やたらと可愛い。いい歳をした大の大人である筈なのに、やることなすことクソ可愛い過ぎて心底困る。更には顔までクソ可愛いので途方にくれる。いうなればそう、可愛い&可愛いの容赦無い暴力だ。私の推し活が日々これ充実しているのも、推しの挙動が可愛いからに他ならない。

という訳で今回は、私の主観や思い込みなどがふんだんに入った【推しの挙動が可愛くてツラい2017〜上半期編】をお送りしたいと思います。

 

【緊張するとめんたまおもくそかっ開くのがクソ可愛い】

推しはどうやら人見知り+陰キャ(自称)の気質があるからなのか、外部の現場に行くと大概めんたま開いて突っ立ってました。最近漸く柔らかな顔をするようになったと思いますが、1年前の推しにとっては初めてとなる大きな仕事(=私が初めて推しを知ることとなった2.5次元舞台)をしていた頃の記事などを見ると、緊張の為か殆どめんたまかっ開いてる上、唇を固く結んでいるのでなんだか今にも泣き出しそうな顔をしてます。なので当時はそういう彼の写真を見る度「この子ホントに大丈夫かよ……」とめたくそ不安を覚えましたが、実際舞台を観に行ってみると終始めんたま開いていたのでやっぱり不安になりました。が、今ではそれがクソ可愛いです。

 

【真面目なことを言おうとすると高確率でだだ滑りするのがクソ可愛い】

推しトークが得意ではないのか、リリイベやカテコで喋り出しますと観客席から何故か笑いが起こります。理由としては

・日本語が微妙におかしい

・話す内容がズレている

というのが挙げられますが、実際初めて外部の大きな舞台(=例の2.5次元舞台)に出演した時、楽日のカテコで「この役を愛している自分の気持ちがファンの皆様に受け入れられない筈は無い!と信じて、僕は今日!このステージに!立ち上がっています!」と声高らかに言い放ち、客席を一気にポカーンとさせてしまったことは今でも記憶に新しいです。なお同舞台の円盤リリイベにおいてもとんちんかんなトークを披露し、司会進行役の共演者様から「アンタちょっと大丈夫!?」と突っ込まれ、最終的にはほぼ全員から弄られてました。

ちなみに推しは以前に某ランキング舞台への出演を果たしているのですけど、劇中において観客を相手にイケてるトークを炸裂させる見せ場でもやはり盛大にダダ滑りをし、自炊の腕が壊滅的に酷すぎるあまりSNSが大炎上した、という自らの恥部を暴露してしまった実績があります。出演者の皆にはウケていたので、結果的にはオーライなのかもしれませんけど。

 

【自分の演じた役が今でも大好きすぎるのクソ可愛い】

推しは時々ツイキャスだったりLINE Liveだったりshow roomだったりでトークをしたり歌を歌ったりしてるのですが、舞台の仕事の話の時は高確率で「例の2.5次元舞台」についてのことを語ります。推しの芸歴はまだまだ2年と短いのですが、その中で自分のターニングポイントとなったのは『1年前にその作品でA(=キャラ名)を演らせてもらったこと』らしいので、この作品にもそれからAにも並々ならぬ愛情というか、執着がやはりあるのでしょう。何しろ自分の演じた役は「他の誰にも渡したくない。絶対に」と言い切ってしまうくらいですから、A最推しの私としてはもうそれだけでクソ有り難くて悶絶します。

いやもうホントにAが大好き過ぎるんですよ。接触現場でスマホのケースにくっついているAのラバストとAに扮した推しのアクキーを見ればめんたまおもくそ全開にして喜ぶわ、そのラバストをわざわざ掴んで隣に立ってる他メンバーに「この人凄いんだよ!ホラA!Aだよ!」とアピールし、恐らくAを全く知らないその子が「これ誰?」と首を傾げているのに対して「オレだよオレ!オレAだし!」と主張はするし、個人企画のファンミーティングで販売されたチェキにメッセを書き込む際にも『ありがとう!』とだけ書いていたところを、私が推しをAごと激しく推しているのを彼はぼんやり覚えていたのか、にこにこしながら『Aの決め台詞』を書き込んでくれたし、所属劇団の本公演をPRするべく行われていた配信においてもAの話をしている時はめちゃくちゃ熱く語っていたし、最終的にはAのぬいぐるみを持ち出した挙句、Aと仲良く会話を交わす一面までも見せるという……クソ可愛い過ぎて訳わかりません……

 

ちなみに推しは現場ではあまり「次に控える外部の現場」についてのアピールを積極的にはしないのですが(してもせいぜい、こちらが言った『次回の公演も楽しみにしてますね』だったり『来週の◯◯行くので頑張って下さいね』だったりに対して『次も絶対来て下さいね!』か『待ってます!』と返してくれる、その程度)先日あった本公演を観劇した際、公演初日に【例の2.5次元舞台のライブ】の詳細告知が漸く出、それを受けてか千秋楽の日、初めて推しから「今度◯◯のライブもあるので、もしよかったら観に来て下さい」と照れ臭そうに頭をぽりぽりしながらライブのダイマをされました。

これにはびっくりしちゃいましたね。ライブは大分先のことだし、チケットだってこの時点では発売されてもいないですから「ライブ行きます!」という宣言はしないつもりでいたその矢先、まさかの先手を打たれたという。きっと恐らく彼なりに『僕またAを演りますんで!一生懸命頑張りますんで!宜しくお願いします!』的なアピールも含めてそう言ったんだと思うのですが、観に来て欲しいと面と向かって言われるってのはアレですね……有難いですね本当に……(なお「勿論行きますよ!2都市の公演、行けるところは全公演!」とサムアップしながら返したところ、推しは「やったー!」とガッツポーズして喜んでました……だめだやっぱりクソ可愛い……)

 

そんなこんなで私は今日も「推しの挙動がクソ可愛いすぎる」と呟きながら生きてます。

ありがとう推し。これからもどうかあざと可愛く、役者の仕事を頑張って下さい。

推しに投資をする話

ここ暫くは推しについての暑っ苦しい語りが続いてしまっていたので、少しアホめの話をしてみる。

 

つい先日の話になるが、推しの属する小劇団の本公演を観に行った。

今回の舞台は出演キャストの役柄は勿論、物語からして独特なもので、現代社会に対する風刺をコミカルに描くその一方で、誰でも1度は必ず味わう夢の挫折や生きていくことのやるせなさなどを芝居を通して突き付けてくる、ある意味エグい内容であった。

実際のところ、推しも「役者としての存在意義についてをめちゃくちゃ考えた」だの「いっそ役者を辞めてしまおうか、実は物凄く悩んでた」だのと、最近にしては珍しく弱音を含んだツイートをしていた。舞台を観ていたこっちもかなり心をグサグサ抉られたのだから、役を演じた本人達は、私ら以上にキツかっただろう。しかしそれでもその道を往くと選んで自ら歩みを進めたのならば、ただ真っ直ぐに前だけを見て、駆け抜けていくしか他ならない。そしてまた、そんな彼らを日々推している私らも同じく、ただ真っ直ぐに推しだけを見て、財布を開いていくしかないのだ。

 

……と、格好をつけてキレイにまとめた前置きを踏まえて、ここからいよいよ本題スタート。

 

遡ること6月頭。私が『先日、推しの属する小劇団の本公演を観に行った』日よりも数日前のこと。小劇団のFCから【スペシャル物販のお知らせ】という告知がしれっとツイートされてきた。

 

『なんと今回の舞台の内容にちなんで、出演キャストが着用している舞台衣装の抽選販売が決定しました!』

 

このお知らせにTLは当然ながら大騒ぎになり、私も思わず渇いた笑いが起こってしまった。確かに以前も某プロデューサー主宰のイベで持ち寄った私物をフリマ形式で売り捌くという事例があったが、まさかここでもソレをやられてしまうとは。ちなみに前述したイベントが開催された当時の私は、役者の仕事にかすっていないものに対して投資をする気が無かった為、在宅茶の間を決め込んでいた。が、今回ばかりは舞台の仕事にちなんだ企画である以上、さすがにスルーは出来なかった。

若干下品な話になるが、劇団メンバーの誕生日イベが推しを含めた劇団員の有志によって自主企画として開催された時のこと。イベ終了後に参加メンバーのランチェキを1枚1000円で購入すると、ランチェキ5枚の購入に対してツーショットチェキがランダムで1枚、更にランチェキ10枚の購入に対して指定のメンバー直筆による「ありがとう」のメッセージを入れた集合チェキが1枚貰えるというので、上限10枚の縛りがあるのは重々わかっていたものの、ダメ元で直接「お願いですから10枚以上、どうか纏めて買わせてください!」とスタッフの方に頼み込み、そこまで言うなら特別に、と、一気に◯枚買わせていただいた。ちなみにこれは遠方に住まう同担の方から頼まれた分も含めた枚数だったのだけれど、そのチェキ代が次の企画に繋がる投資となるのであれば、◯万出しても惜しくはないと思った結果、こうなった。なお推しからは「ありがとう!」というメッセージの他、私が彼の演じた役で1番好きなキャラクターである『A』が発するキメ台詞を書き込んでいただき(チェキに書き込むメッセージのリクは不可だったような気がするので、これはある意味ファンサだと思う……むしろそうだと思いたい)めちゃくちゃ沸いた。ありがとう推し

 

そして話は『スペシャル物販』の話に戻る。

遂に迎えた公演初日。私は劇場に入ると早速スペシャル物販専用ブースの受け付けに並び、スタッフさんからオーダーシートを1枚貰うと、記されていた内訳ならびに価格をひとまずチェックした。

どうやら推しから提供される衣装は2種類あるらしく、メインで着ているAセット(約3万円)の他、終盤で着るBセット(約2万円)がオーダー対象となっていて、どちらのものも靴までしっかり含まれていた。なおオーダーの複数応募、そして一口の応募に対して複数セットの購入希望を出すのは可能ということで、私は迷わず「A・Bセット、両方合わせて購入希望」とシートに書き込み、最終的には合計3口申し込みをした。当たるかどうかは別として、とにかく推しに存在価値があるから故に、こうして投資をしている訳だ。ということをアピール出来れば本望なのだ。推しの仕事に関わることには躊躇うことなく財布を開く。それが楽しく思えているなら、対価としては充分である。

 

だが実際に当たってしまうと、恐れ多くて服は着れない、サイズ違いで靴は履けない、トルソーを買って置こうにも、正直なところ場所を取る。推しのシューズを玄関に置いてそれを眺めて喜ぶ反面、割とガチめに途方にくれてる。

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未知との遭遇・後編

遂にやってきた公演楽日。

詳しくは前回のエントリをご参照ください。

 

その日は確か晴れだったと思う。友人と共に会場へ向かうと、そこにはやたらと可愛い女子が大量に集まり、スタンド花の写真を撮ったり友達同士で写真を撮ったりするのが見られ、一瞬ここが舞台を観に来る会場というのを忘れてしまう程だった。友人曰くこの劇団を推してる子たちは10代〜20代の若い子が多いらしいとのこと。時折聞こえるバイトや学校、それから出演メンバーについての話題で盛り上がる声に微笑ましさを覚えつつ、私はひとまず席に向かった。

今回の舞台はとある恋愛シュミレーションゲームを舞台化したもので、更に劇中、推理ゲームのパートが加わる特殊なシナリオを敷いている、少し変わった舞台であった。友人からの前情報で推理ゲームの攻略法と当該パートの見どころを知っていなければ、恐らくちんぷんかんぷんのままで、観劇を終えていたかもしれない。

ちなみに舞台の感想はというと、推理ゲームのパートになると役者さん自身の「素」が出てしまい、進行具合がぐだぐだになる場面がちょこちょこあったりはしたが、客演の方のアドリブ力で笑いに変わってむしろ良かったところもあった。残念ながら千秋楽の某くんはゲームの終盤を迎える前に離脱となってしまった為、見せ場のセリフを聞けなかったことが個人的には今でも惜しい。

そして気がつくと舞台は無事に終わりを迎え、物販開始のアナウンスが流れると同時、ロビーに向かってぞろぞろと人が移動し始めた。いよいよ例のファンサービスがスタートするのだ。

緊張による手汗を拭ってロビーに出、ブースの前から少し離れたところに居た友人と合流し、推理ゲームの結果だったり舞台の感想だったりをつらつら語って暫く待つと、通用口からぞろぞろとキャストがやって来た。

にこにこと微笑みこちらに向かって手を振るキャスト。ロビーに群れる女子から上がる黄色い歓声。しかし某くんはこちらをちらと見ることもなく、緊張の為か仏頂面でスタスタと前を通り過ぎ行き、そしてひとことぽつりと言った。

 

某くん「……ありがとうございますー……(超小声)」

 

無愛想過ぎる!!!!!

 

某くんがかなりの人見知りなことは友人からの情報によって既に認識していたものの、この塩っぷりには思わずポカンとするしかなかった。そんな私を見て友人は「某くん、割とこんな感じですよ」と笑ってフォローを入れてくれたが、いくらなんでも塩過ぎるだろう。それでも間近で顔を見られただけでも充分だ、と思うことにし、私はひとまず列に並んだ。某くんはやっぱり後ろの方に引っ込んだまま、なかなか前には出てこない。しかしそれから数分後、スタッフさんが某くんに向かって何やらぼそぼそ呟くと、彼はのろのろとブースの端へと移動した。するとブースの列に向かって、スタッフさんがこう言った。

 

『えー、次回の本公演のチケットですが、本日こちらで購入出来ます!ただいま某くんが販売担当で立っておりますので、ご希望の方はこちらにどうぞ、お並びください!』

 

……哀れ某くん、半ば無理矢理ブースの前に駆り出され、直立不動になるの巻。しかし何度もスタッフさんが『楽日以外はS席あります!この機会に是非!』とアナウンスするにもかかわらず、誰ひとりとして並ばない。某くんの立つブースの前で遠巻きに彼を眺める列は出来ているのに、チケットを売るブースの前には列が無い。これは一体どういうことだ?とそわそわしながら首を伸ばして向こうを覗くと、背後に並ぶ友人が、私に向かってこっそり告げた。

 

「皆とっくに(当該チケットを)持ってますからね。ここでわざわざ買うって人は、あんまりいないと思いますよ」

 

考えてみれば確かにそうだ。熱心なファンなら既に次回の公演をチェックし、チケットを押さえている筈だ。であれば今のターゲットはむしろ、この公演で劇団員に興味を持った層になる。しかもチケットはまだ余っていて、捌く機会も他になかなかないのだろう。某くんをわざわざブースに立たせた目的がそこにあるのなら、もしもこのまま誰ひとりとしてブースに来ない場合は、つまり。

私は財布をおもむろに開き、所持金額を確認してみた。これから自分が買おうとしているパンフ1部とブロマイド10枚。その金額を差し引いてみると、ちょうどチケット1枚分の額面が残る計算となった。

 

「私、次回のチケット買ってきます!!!!」

 

私はグッズの会計を済ますと、すぐさまダッシュでチケットブースの前に走った。そして慌ててスタッフさんに「すいません、楽日のA席1枚ください!」と告げると、手にしたパンフとブロマを机にばさりと置いた。ちなみにこの時某くんはパーテーションの裏へと再び引っ込みかけていたのだけれど、チケットを買う私に気付き、慌ててブースに戻ってくれた。そして机の上に置かれたブロマが自分のものだというのを見、あっ!ありがとうございます!と言ってぺこりと頭を下げた。

 1ヶ月前に観たあの舞台。板の上に立つ某くんを、初めてこの目で観た舞台。観客席から遠く姿を観ていた彼が、すぐ目の前で頭を下げてくれている。非現実的なその状況に、私はまんまとパニックを起こした。とにかく何か、ひとこと何かを言おうと思って口を開いたその瞬間、ついついうっかり『彼が演じた例のゲームのキャラクター』が劇中で呼ばれる愛称で、某くんのことを呼んでしまった。

某くんもさすがにこの場でその名を呼ばれようとは、まさか思っていなかったのだろう。彼は両目を大きく見開き、驚いたように「えっ!?も、もしかしてみ、観てくださったんですか!?ええー!?」と私に言うと、うわー……ありがとうございます……すげー嬉しいです……と照れ隠しなのか小声でぼそぼそ呟きながら、またぺこぺこと頭を下げた。

正直言って意外であった。何しろ彼のツイートを見ると、舞台の話をする以外には大概自撮りの写真と共に、若い子であれば好むであろう『日常生活のチラ見せ』か、もしくは『メンバーと一緒に楽しく遊んだご報告』を、可愛い絵文字をふんだんに用いてツイートするのが主だった為、私はてっきり、いつもしているツイートのようなチャラい感じで「わー!こないだの舞台、観てくれたんスか!どうもあざっす!マジ嬉しっス〜!」と言ってくるかと思っていたのだ。ところが彼は私の予想を大きく裏切り、見ているこちらが申し訳なく思うくらいにたどたどしくも一生懸命、感謝の言葉を伝えてくれた。

ここからは私の主観になるが、例の舞台で自分がAを演じることは、彼にとってはかなりの圧であったと思う。実際彼は公演前に「この作品に自分が出演するにあたって、色んな意見があるのは充分解っています。だけど自分は出来る限りの精一杯を、芝居にぶつけるしかありません」というツイートをしていて、そのあと暫く自分がどれだけ本気で舞台に向き合い、どれだけ役を大事に思って演じているのか、初日を迎えるその日まで、思いの丈をとにかくひたすら呟いていた。なので恐らく『誰かに自分の演じたAを《良かった》と言ってもらえる』かどうかを、彼は相当気にしていたのではないのだろうか。特に2.5次元舞台となれば芝居の技量は当然のこと、キャラにどれだけ忠実であるかを観客からは求められ、シビアな評価を下されるのだから。

本来ならばこの時この場で伝えるべきは、今インプットされた舞台の感想なのだろう。推理ゲームは見ていてかなりハラハラしたとか、殺陣がめちゃくちゃキマっていたとか、褒めちぎる言葉はいくらでも出せた。しかし私が某くんに向けてまず1番に伝えたかったのは、Aを演じてくれたことへの感謝の言葉、それだけだった。

 

いつか舞台の再演があったら、必ずまた、絶対にAを演じてください。その時が来るのを待ってます。

 

そう言ってぺこりと頭を下げると、某くんは真っ直ぐこちらを見ながら、はい!とひとこと返してくれた。とても真面目な顔をして、こちらをじっと見つめてくれた。私は再度頭を下げて、そそくさとその場を後にした。極度の緊張と興奮によって震える手足を必死に動かし、友人と共に会場を出ても、暫く頭がぼんやりしていた。

こうして私の推し活は、ゆるゆるながらもスタートを切った。いつか再び舞台の上でAを演じる『推し』を観られるその日が来るのを目標にして、推しの仕事に投資をしよう。そんな決意を胸に込め、今日も私は推し活に励む。

 

ちなみに推しは今年再び、1年振りにAに扮して舞台の上に立つ予定です。意外に早く目標達成がなされてしまって若干拍子抜けですが、また新しい目標を立てて、ゆるゆるのんびり頑張ろうかと思います。

 

 

未知との遭遇・前編

前回のエントリーでは『初めて推しを知ったきっかけ』を気の向くままにダラダラ書いた。

ので、今回のエントリーでは『推しを推そうと思い始めた第1段階』についてのことを書こうと思う。

 

私が推しを知るきっかけとなった、とあるゲームの2.5次元舞台が終わった約1ヶ月後。同じゲームを好きなことから仲良くなった友人のひとりに「A役を演った某くんの舞台が今度某所であるんですけど、興味あったら観に行きません?」と、観劇の誘いをいただいたのだ。

話は若干前後をするが、Aを演じた『某くん』というのは2.5次元舞台においては全く無名の役者であったが、実は大手の芸能会社が管轄している小劇団のメンバーであり、劇団主宰の本公演では大体主役を務めているので、大きな舞台に出るというのが今回初めてであっただけで、全く無名の新人役者な訳では決してなかったらしい。そして、例の舞台が終わった後も本公演への出演が続けて既に決まっていたので、恐らく丁度、役者の仕事をメインに据える時期に当たっていたのだろう。

実際のところ某くんがAを演じたことをきっかけにして、彼の属する小劇団に注目を置くフォロワーは割と多かった。ゲームの舞台化をきっかけにして、推しキャラを演じたキャストの方の出ている舞台に興味を持ち、観に行くうちにそのままズブリと俳優沼にハマっていった方が当時はかなり多かったので、TLでも「これから◯◯さんの舞台観に行く〜」と誰かが言えば「私も明日観に行きます!」「会場でお会い出来たら声かけますね〜」とリプライがつくのをしょっちゅう見かけた。そして某くんの属する小劇団のFCに入ったという報告や、ローカル局で放送していたその劇団の構成員がわちゃわちゃしている番組を観て「某くん可愛い」と呟く方や「某くんの舞台観に行こうかな」と呟く方も、多く見かけた。

が、私はこの時「某くんがAを演じてくれて本当に良かった……」とTLでやたらと感謝の言葉を呟いてはいたが、某くん自身にそこまで興味は持てずにいた。最推しキャラのAに扮した某くんの写真はここぞとばかりに保存しまくり、気に入りの写真はロック画面とホーム画面の待ち受け画像に設定をして「某くんのAマジ最高かよ」と悦に浸ってはいたけれど、衣装を脱いでカツラを外し、劇団の仲間ときゃっきゃしている某くんの姿をテレビで観ても、沸き立つことは全く無かった。

恥を忍んで白状すると、当時の私は『某くん』と『某くんの仲間』を見分けることが、なかなか出来ないポンコツだった。何しろ彼の属する小劇団の構成員は全員が全員イケメンな上、髪型は皆大体同じ・顔の造りも大体同じ・背格好にしても大体同じに見えたので、Aの姿で無い某くんに、正直魅力を感じなかった。

 なので私はその友人に「中の人にはそこまで興味が無いんですよね……」とバカ正直に前置きをして、しかし折角誘ってくれた厚意を無碍にするのも申し訳無いと思っていたので「だけど1度は某くんの舞台を観てみたいなと思っていたし、ちょうど楽日は仕事も無いので、ご迷惑でなければ是非ご一緒に!」と返事を送り、楽日のチケを押さえてもらった。TLで早速それを報告すると、同じ舞台を観に行くらしいフォロワーからは「私も楽日に行きます!」「某くんの舞台、楽しみですね!」とリプライがつき、そこから久々に会話が弾み、話の流れで某くんの演じたAについての感想だったり考察などを語りあったりするうちに、某くんの芝居を再びこの目で観られることが、だんだん楽しみになりつつあった。

そしてそれから暫く経って、遂に舞台は初日を迎えた。友人からは初日の舞台のざっくりとしたレポートと共に、次回公演の情報ならびにその公演のチケットが物販ブースで買えるということ。また、物販ブースは終演後に限り、舞台キャストが日替わりで入って接客をするということ。ちなみに初日の今日は某くんがブース担当らしかったのだが、どうやら彼は人見知りスキルを発動させてしまったようで後ろに下がって一歩も動かず、所在無さげにしていたということ。しかし楽日の物販ブースは某くんが再び担当するので、パンフを買うなら終演後まで待つのがベストであるということ。そういった細かい情報が、LINEで一気に送られてきた。

これにはかなり驚いた。出演キャストが物販ブースに直接立って、チケットを自ら手売りする。数分前まで舞台の上で芝居をしていたあの人が、観客席から遠く眺めていたその人が、机ひとつを挟んだ距離で、すぐ目の前に立っている。しかもどうやら運が良ければひとことふたこと声を掛け、会話をするのも可能だという。友人曰く、小劇団の舞台においてはごくごく普通のよくあるサービス(?)らしいのだけれど、私にとっては『ルーヴル美術館にミロのヴィーナスを拝みに行ったら《写真撮影可》の立て札があった』のを見た時と、同じレベルの驚きだった。(※ちなみにこれは10年以上前の話になりますので、今はダメかもしれません)

 

今となってはこのシステムに驚くことも戸惑うことも怯えることも無いけれど、あの頃の私は見聞きするもの全てのことがただただ未知で、衝撃的なものだった。

そしてとうとうやってきた、本公演の最後となる日。この日を境に私の休暇が「舞台」と「リリイベ」のどちらかによってほぼほぼ埋まる事態になるとは、全く思っていなかった。

 

はじめに

私が推し推し始めてから、今年で漸く1年になる。

やっと1年。だがまだ1年。初期から推してる同担の中では、当然ながらド新規である。特に私は2.5次元舞台を通じて推しの名前を初めて知ったクチなので、観劇歴もまだまだ浅い。なにせ当時は舞台を観に行く目的が、板の上に立つ推しの姿を見届ける為ではなかったからだ。

では何故推し推し始めたか。

まずはそこから切り出してみる。

 

私は推し推し始めるまで、2.5次元舞台の演者にそれほど興味を示せなかった。好きなゲームが舞台化されたらひとまず観に行き、ゲームの世界が芝居となって演じられるのに盛り上がってはいたけれど、キャラを演じた「中の人」達がひとたび舞台を離れてしまい、キャラの衣装を脱いでしまえば、興味はそこで潰えてしまった。そしてもともととあるひとつのゲーム以外に熱意を注げるものが特に無かったこともあり、次々出てくる漫画やアニメの《舞台化》の話をTLでぼんやり眺めては「◯◯の舞台続編はよ」と思い出したように時々呟く、なんともゆるゆるなスタンスだった。

 

が、転機は突然訪れた。

ゲームもアニメも既にオワコン、舞台は初演と再演が続いて行われたものの、その後の話が全く表に出てこなかったそのコンテンツが「新シナリオによる舞台化」という、一大ニュースを出してきたのだ。

まさかの舞台化。待ちに望んだ新展開。この発表に全クラスタは大いに沸いた。しかし「舞台化」の発表はされたが、どういう訳だか上演期間やキャストについての発表が無い。当然ながらTLは「まさかキャス変」「詳細はよ」の呟きで一気に埋め尽くされ、公式の動きを固唾を飲んで見守る流れが暫く続いた。

そしてそれから数ヶ月のち、遂にキャストが発表された。

主人公キャラはキャス変無し。

主人公キャラと対立しているサブキャラ2人もキャス変は無し。

だがしかし、主人公キャラと絡みの深いキャラAだけは、この作品からキャス変となった。

主人公並に人気が高く、劇中においても重要なポジを担うA。それに加えて初演、再演でAを演じた役者さん自身もかなりの人気がある方故に、この発表には全クラスタが衝撃を受けた。

勿論私も驚いた。

なにせ私の最推しキャラは、何を隠そうAだったからだ。

 

当時のことはよく覚えている。「公式ありがとう!」「新しいA、めっちゃ楽しみ!」という呟きと「残念」「ショック」「Aのキャス変ぶっちゃけ無理です」という呟きで、TLが埋まったあの日。A最推しで尚且つ今までAを演じた役者さんをも推していた方の中には、相当落ち込む方もいた。◯◯くんの演じるAをすごく楽しみにしてたのに、このキャス変は酷すぎる。今回はもう観に行かない。そう呟いたきり舞台のことには触れなくなってしまった方も、そういえば当時、いたような気がする。何しろ今回Aを演じる某役者さんは、そこそこ舞台に精通しているフォロワーの方すら「誰???」と呟くレベルで無名の、駆け出しに等しい新人役者であったからだ。2.5次元舞台のキャリアも知名も充分あった◯◯さんの後続としては、役目不足に思えてしまう。新作舞台に好意的で無い意見ツイートの殆どは、この点を主に挙げていた。

 

それを見る度複雑だった。勿論誰でもいい訳ではない。しかし同時に、誰かでなければ絶対嫌だ!という訳でもない。ただ、唯一残った舞台化というこのコンテンツが、始まる前から盛り下がるのだけは嫌だった。そういう意味では演者に対して執着が無かった当時の自分の気楽さを、今しみじみと幸いに思う。

無名だろうが駆け出しだろうが、この際それは関係ない。舞台の上で一生懸命Aを演じてくれるのならば、最大限の敬意をやはり払いたい。まずは某くんの名前を覚え、どんな仕事をしている方か、知るところから始めよう。

 

書き出してみたら予想以上にダラダラとした長文になったが、これが1年前のこと。舞台役者にとんと興味の無かった私が、初めてひとりの役者に対して興味を持ったきっかけがこれ。

思えばあれから早や1年。今や私は2次元オタクと若俳オタクを掛け持ちしながら、仕事の合間に推し活に励み、推し活の為に日々の職務を全うしている。

ここでは推し活の記録も兼ねて、ゆるく色々書こうと思う。推しの名前は伏せますが、もしもうっかり誰のことだかわかった時は、何卒宜しくお願いします。