人生、難あり

若俳推し活備忘録

未知との遭遇・前編

前回のエントリーでは『初めて推しを知ったきっかけ』を気の向くままにダラダラ書いた。

ので、今回のエントリーでは『推しを推そうと思い始めた第1段階』についてのことを書こうと思う。

 

私が推しを知るきっかけとなった、とあるゲームの2.5次元舞台が終わった約1ヶ月後。同じゲームを好きなことから仲良くなった友人のひとりに「A役を演った某くんの舞台が今度某所であるんですけど、興味あったら観に行きません?」と、観劇の誘いをいただいたのだ。

話は若干前後をするが、Aを演じた『某くん』というのは2.5次元舞台においては全く無名の役者であったが、実は大手の芸能会社が管轄している小劇団のメンバーであり、劇団主宰の本公演では大体主役を務めているので、大きな舞台に出るというのが今回初めてであっただけで、全く無名の新人役者な訳では決してなかったらしい。そして、例の舞台が終わった後も本公演への出演が続けて既に決まっていたので、恐らく丁度、役者の仕事をメインに据える時期に当たっていたのだろう。

実際のところ某くんがAを演じたことをきっかけにして、彼の属する小劇団に注目を置くフォロワーは割と多かった。ゲームの舞台化をきっかけにして、推しキャラを演じたキャストの方の出ている舞台に興味を持ち、観に行くうちにそのままズブリと俳優沼にハマっていった方が当時はかなり多かったので、TLでも「これから◯◯さんの舞台観に行く〜」と誰かが言えば「私も明日観に行きます!」「会場でお会い出来たら声かけますね〜」とリプライがつくのをしょっちゅう見かけた。そして某くんの属する小劇団のFCに入ったという報告や、ローカル局で放送していたその劇団の構成員がわちゃわちゃしている番組を観て「某くん可愛い」と呟く方や「某くんの舞台観に行こうかな」と呟く方も、多く見かけた。

が、私はこの時「某くんがAを演じてくれて本当に良かった……」とTLでやたらと感謝の言葉を呟いてはいたが、某くん自身にそこまで興味は持てずにいた。最推しキャラのAに扮した某くんの写真はここぞとばかりに保存しまくり、気に入りの写真はロック画面とホーム画面の待ち受け画像に設定をして「某くんのAマジ最高かよ」と悦に浸ってはいたけれど、衣装を脱いでカツラを外し、劇団の仲間ときゃっきゃしている某くんの姿をテレビで観ても、沸き立つことは全く無かった。

恥を忍んで白状すると、当時の私は『某くん』と『某くんの仲間』を見分けることが、なかなか出来ないポンコツだった。何しろ彼の属する小劇団の構成員は全員が全員イケメンな上、髪型は皆大体同じ・顔の造りも大体同じ・背格好にしても大体同じに見えたので、Aの姿で無い某くんに、正直魅力を感じなかった。

 なので私はその友人に「中の人にはそこまで興味が無いんですよね……」とバカ正直に前置きをして、しかし折角誘ってくれた厚意を無碍にするのも申し訳無いと思っていたので「だけど1度は某くんの舞台を観てみたいなと思っていたし、ちょうど楽日は仕事も無いので、ご迷惑でなければ是非ご一緒に!」と返事を送り、楽日のチケを押さえてもらった。TLで早速それを報告すると、同じ舞台を観に行くらしいフォロワーからは「私も楽日に行きます!」「某くんの舞台、楽しみですね!」とリプライがつき、そこから久々に会話が弾み、話の流れで某くんの演じたAについての感想だったり考察などを語りあったりするうちに、某くんの芝居を再びこの目で観られることが、だんだん楽しみになりつつあった。

そしてそれから暫く経って、遂に舞台は初日を迎えた。友人からは初日の舞台のざっくりとしたレポートと共に、次回公演の情報ならびにその公演のチケットが物販ブースで買えるということ。また、物販ブースは終演後に限り、舞台キャストが日替わりで入って接客をするということ。ちなみに初日の今日は某くんがブース担当らしかったのだが、どうやら彼は人見知りスキルを発動させてしまったようで後ろに下がって一歩も動かず、所在無さげにしていたということ。しかし楽日の物販ブースは某くんが再び担当するので、パンフを買うなら終演後まで待つのがベストであるということ。そういった細かい情報が、LINEで一気に送られてきた。

これにはかなり驚いた。出演キャストが物販ブースに直接立って、チケットを自ら手売りする。数分前まで舞台の上で芝居をしていたあの人が、観客席から遠く眺めていたその人が、机ひとつを挟んだ距離で、すぐ目の前に立っている。しかもどうやら運が良ければひとことふたこと声を掛け、会話をするのも可能だという。友人曰く、小劇団の舞台においてはごくごく普通のよくあるサービス(?)らしいのだけれど、私にとっては『ルーヴル美術館にミロのヴィーナスを拝みに行ったら《写真撮影可》の立て札があった』のを見た時と、同じレベルの驚きだった。(※ちなみにこれは10年以上前の話になりますので、今はダメかもしれません)

 

今となってはこのシステムに驚くことも戸惑うことも怯えることも無いけれど、あの頃の私は見聞きするもの全てのことがただただ未知で、衝撃的なものだった。

そしてとうとうやってきた、本公演の最後となる日。この日を境に私の休暇が「舞台」と「リリイベ」のどちらかによってほぼほぼ埋まる事態になるとは、全く思っていなかった。