人生、難あり

若俳推し活備忘録

愛を乞う人・後編

そんなこんなで後編です。

 

なんとか休みをもぎ取った初日、チケットを手に会場へ行くとロビーには既に人が大挙し、ゲネプロを観た関係者の方がぞろぞろロビーに出て来ていました。

それから暫し待つこと数分。先行物販がスタートし、パンフやブロマを購入後、ガチャ列に並んでひたすら推しの缶バとアクキーが出るまで粘り、それが終わると今度はすぐさまトレーディング系アイテムの仕分けに勤しみ……観劇前からもうぐったりです。何しろ私はこういった系の自引きが不得手で、トレブロを積んでもどういう訳だか推しだけ全く出ないというのもザラにあります。しかも今回は出演キャストが2桁に登る大所帯ですから、トレードに頼って回収するしか他ありません。ひとまず手持ちのグッズの画像とそれから詳細、加えて「求)推し。買取もいたします」とツイートをして、ロビー付近をうろうろすると……

 

「お探しの推しくんあります!」

「こちらの推しくん、買取可能でしょうか?」

 

わ〜〜〜!!めっちゃ集まってきたよ推し〜〜!!ありがてえ〜〜〜!!!!

 

どんどん手元に集まってくる推し。更にトレード風景を見た周囲の方から「私も推しくん持ってます!」「よかったらこちらの推しくんいかがですか?」と声をかけられ、気がつくと手元に大量の推しが。なお余談ですがこれですっかり推し回収マンと認知を貰ってしまっていたのか、このあと現場に入るたんびに推しのグッズを色んな方からお譲りさせていただきました。その節は皆様、本当にありがとうございました。

 

しかしこのことで嫌という程痛感しました。推しの認知はまだまだ低い。推しが出ていた例の舞台の名前を出しても「ゲームの名前は知っているけど、舞台があったのは知らなかった」と仰る方が殆どの状態。となると逆にこの舞台を観て、気に留めて貰えるかもしれない。推しがどういう役柄なのかはわからないけども、どうかそこそこ目立つ場面がありますように。と、当時の私はハラハラしながら座席について、板の上に立つ推しの姿をガン見していた思い出があります。

ざっくりとした感想を述べると、予想したより面白かったです。物語自体も破天荒ながらまとまりはあって終始笑いが起こってましたし、歌やダンスの見せ場もあるのでそこは大いに盛り上がりましたし、なんだかんだで楽しかったです。

ただ、例のランキング発表の場面に移るとさすがに笑っていられませんでした。上位のキャストが前方に並び、ランクの外れたキャストがその後方に下がった瞬間、推しは一瞬微妙な顔をしてました。レビューが始まりフィナーレを迎えるその間にはいつも通りに戻ってましたが、あの表情をした背景を思うと、なかなか複雑なものがあります。

この日が来るまで必死に覚えた歌も踊りも、それからセリフもアクションも、 その日の順位の結果によっては観せられないまま終わります。ファンの投じた応援票が充分な数に達しなければ、稽古の成果をお披露目出来るチャンスは推しに巡って来ないのです。しかもその票に天井は無く、土壇場でいきなりドンデン返しが来るかもしれない可能性だってある訳で。つまりは推しが何とかキープをしている《1位》の回も、場合によっては突然パアになることだってある訳で。

ここで漸く私は以前友人の言った『推しにトップを獲らせたいなら話は別だ』の意味を知り、そして同時に観客席からペンラを振って推しの姿を見届けるだけでは何の足しにもなりゃしないことも、はっきりしっかり理解しました。恐らくそれは会場に来ている全ての人もおんなじように考えていて、むしろそういう覚悟なんかはとっくのとうに決めてきていて、板の上に立つ自分の推しを観に来てるんだと思います。何とも甘い考えでした。推しはまだまだ認知が低く、推しを目当てに来ている人も、そうそう多くはないというのに!

 

そうこうするうちにカテコが終わり、ぞろぞろと人が群れなすロビーに出てみると、入り口脇ではリピーター特典ブロマイド付きのチケット販売が始まっていて、シートマップと睨めっこしながら吟味にいそしむ女子達がちらほら集まりつつありました。

舞台はまだまだ続きます。そして同時に《推しが上位に登るチャンス》もこの先まだまだ残されています。私はすぐさまその列に並び、行けるところを片っ端からオーダーしました。席種は問わず、ただひたすらに《自分の推しに頑張って欲しい》その一心で、初めて追いチケなるものをしました。筋金入りの若俳オタクの方からすれば今更感が満載ですが、そこは大目に見て頂けたら幸いです。

 

しかし当時を振り返ってみると、楽しかったこともありましたけれど、精神的にキツかったこともそれ以上にはありました。グッズをトレードしてくれた方からは推しが1位に輝いたことやレビューの歌唱をお褒めいただきもしましたし、舞台の歴代シリーズを網羅している方からは舞台の見どころをレクチャーしてもいただきましたし、常にぼっちで行動していた私でしたが、皆様のお陰で観劇前のひと時を、非常に楽しく過ごせていました。ですがひとたび舞台が終わっておもむろに推しの呟きを見ると、そこで一気に気が沈みました。

「今日も上位に入れなかった(-_-)」

「次は必ずてっぺんに立つ!」

「まだまだ圏外の日が多い……皆様どうか、応援よろしくお願いします!」

いや呟くのは構わないんですよ。自分が上位に入れなかった悔しさや、今の順位を少しでも上にあげていきたい気持ちがあるのはわかりますから。でも今回の舞台を観に来るターゲットの層、すなわち《自分の仕事にそれ相応の対価を払い、応援の気持ちをきちんと形にしてくれるファン》に対してその情熱が届いてなければ「観に行けないけど応援してます」「上位になるよう祈っています」といった類の、形にならない応援だけが集まるのみです。厳しいことを言うようですが、言葉だけでは到底自分の《求める結果》は実りません。仮に推しへのリプライの数で順位が上がっていくのであれば、今頃とっくにV2、3は勝ち獲れています。でも実際は公演終了間近になっても順位に大きな変動はなく、後半を迎えて私がずっと温存していたポイントを一気に貢いだ公演においても、順位は依然、そのままでした。1度は1位を勝ち獲ったものの、それから以降はありませんでした。

 今のご時世、観客動員を増やす為には手段を選んでいられません。リピーターへの特典しかり、アフタートークやハイタッチ会の開催しかり、後出しサービスをふんだんに用いて、チケットを売るべく必死になってる今日この頃です。ですがそういうサービスを出しても、食いついてくるのはほぼ大半が「元々観劇予定があって、当該公演のチケットをまだ所持していない」人ではないかと思います。

果たしてその時主宰者側の必死さを汲んでチケットを増やす熱心なファンが、推しには何人いるのでしょうか。そして舞台のレポを上げるといつも決まって「観に行けないけど応援してるね!」と送られてくるリプライの数より「今度観に行くよ!楽しみにしてる!」と送られてくるリプライの数を増やす為にはどうすればいいか、推しはそろそろ本腰入れて考えるべきではないのでしょうか。板の上に立つ自分の姿を多くのファンに観に来て欲しいと願うのであれば、そういう姿勢を芝居を通じて《魅せて》いかねばならないんじゃないかと、そして観に来た自分のファンへのフィードバックをきちんと次へと繋げなければならないんじゃないかと、例の舞台が終わって半年経った今となっても、私はモヤモヤしています。

 

……と、そんな思い出をつらつら書き連ねているうちに、例の舞台の新作公演が先日ついに発表されて、只今めちゃくちゃ動揺してます。キャスト発表はまだまだ先になるようですが、恐らく推しは出演するかと思います。その日が来るのを想像するだけで胃液が口から出て来そうですが、ひとまず今日も推しの芝居を観に行ってきます。