人生、難あり

若俳推し活備忘録

1番好きな舞台の話・前編

もし今誰かに「このブログを見てあなたの推しに興味が出たので、オススメの舞台を是非とも教えてくれないか」と声がけされたら、自信をもってオススメしたい作品がある。おもくそ笑えて、おもくそ泣けて、そしてしみじみ色んなことを考えされられる、最&高の作品だ。

今回はその、私が1年通して推しの舞台を観てきた中で今でも何度も円盤を見返し、ツイッターでも度々熱く語ってしまう、そんな舞台の話をします。

 

今年の初め、推しにとっては長期となったとある舞台が無事終わり、推しの属する小劇団から4ヶ月振りの本公演となる舞台の告知がありました。その後すぐに運営からは公演期間と出演メンバー、そしてビジュアルが続けて発表されたんですが、何故だか全員80年代アイドルの如くやけに古風な扮装で、私の推しに至ってはまるで「……これからセミでも捕まえに行くん?」と聞きたくなるよないでたちをしていたもんですから(余談ですけど物販のブロマもその衣装でした)タイトルとキャストのビジュアルがハマらず、遂に初日を迎えたその日、推しを含めたメンバーの皆が「僕らにとっては等身大の物語ともいえる作品」「役の台詞が自分自身に重なって、色々考えさせられた」とツイートするのを見ていても、実際舞台を観に行くまでは、どういう話か全く想像つきませんでした。

ひとまずざっくり前置きを兼ねて設定の一部を紹介しますと

・舞台は現代

推し(主役)は3人組のダンスボーカルユニット?のメンバーのひとりで、メンバー全員所属事務所が用意している下宿に住んでる

・芸能界に入ってかれこれ10年近くの月日が経つが、デビューをしても売れる気配が全く無い為、すぐに解散してしまう

・事務所の偉い人達からは「金にならない」お荷物扱いされている

……まあ要するに《芸能界でのデビューを夢見てがむしゃらに頑張る若者たちの悲喜こもごも》を主軸に描いたこの作品を、芸歴としてはまだ駆け出しの若手に等しい彼らが演じた訳ですよ。登場キャラにも事務所の社長や副社長、プロデューサーにマネージャー、デビューの出来ない彼らを見下す後輩に、そして彼らについてるたったひとりの追っかけファンがいたりするので、そのキャラ達の設定はもとより発する台詞もなかなかリアルなものでしたから、観劇中はあるある過ぎて思わず真顔で見入ってました。

総括するとコメディのようでどシリアス、ノンフィクションのようでいながらあくまでフィクション、メンバーが演じる役それぞれにメンバー自身の自己投影を重ね見ながら、その一方ではかつての自分も同じ思いを抱えていたな、とうすらぼんやり考える、そんな感じの舞台です。これから先は私の言葉によるものですが、その《ものがたり》の紹介などをしていきたいと思います。

(※舞台のストーリーをなぞる形で書き連ねるので、実際の台詞と異なることが多々あります。ご了承ください)

 

 

始まりはとあるスタジオの中。ラジカセから流れる曲に合わせて、ダンスを踊る3人の青年。彼らは全員15の時に芸能事務所の養成スクールに入所をし、それから実に3度に渡ってアイドル・ロッカー・倫理に反するボーカルグループ(=かなり有名な《某国ポップスグループ》のパクリ)と形態を変えてデビューをするも、いずれも全て1年足らずで解散を余儀なくされてます。今は週2で自腹を切ってスタジオを借り、ひたすらダンスの自主練をしながら「いつになったらデビューの話が来るんだろうね」「そのうちチャンスが巡ってくるよ」と10年経っても鳴かず飛ばすの境遇をぼやいて、それでも夢を諦められずにここまで来ている状態です。

が、転機は遂にやって来ます。マネージャーから「お前らのデビューが決まったぞ」と、メンバーの元に1本の電話が入ったのです。その吉報に大喜びし「遂にデビューだ!」とスタジオを慌てて飛び出し、下宿に戻るメンバー達。しかし一方、浮かない顔で電話を切ったマネージャーは、同席していた事務所の社長と副社長に向かって「あいつらのデビュー、考え直してもらえませんか」と訴えます。「俺は今まで頑張ってきたあいつらにきちんと向き合いたい。俺はあいつらのマネージャーとして、こんな形でデビューをさせるのだけは嫌です!」と、漸く決まったデビューの話を喜ぶどころか、必死になって取りやめようと抗議を続けるマネージャー。だが、社長は顔色ひとつも変えることなく、彼に対してきっぱりと告げます。

「金にならない奴らをこのまま飼い続けても、会社にとってはそれだけで既に損失だ。奴らときちんと向き合いたいなら、責任を持ってお前自身で引導を渡せ」

大手の芸能プロダクションにとって、利益を生まないタレント=厄介なお荷物と見なされます。社長が下したその判断は、決しておかしなものではないです。しかしそれでも納得がいかずに「ですが……!」と渋るマネージャーを見て、副社長までもが更に追い討ちをかけました。

「むしろここまで売れない奴らの面倒を見てきてやったんだぞ?会社としても温情は十分、与えてきたと思うんだけど?」 

 

もう本当、ここのシーンは観ていて思わずぞわぞわしました。きっと恐らく本読みした時、色んなことが脳裏を過ぎっていったんじゃないかと…… 。マネージャー役のキャストさんも他の舞台じゃ天真爛漫・明朗快活なキャラを演じていらっしゃいますが、この時ばかりは凄く真面目な、重い演技が際立ってました。

そして場面は一旦変わって、下宿に戻った3人がそこで、後輩にあたるタレントの2人と衝突します。こっちの2人は後輩ながらも既にデビューは果たしている上、ワンマンライブも即完している有望株です。そんな彼らは先輩である3人に対して「早く事務所に入ったってだけで、先輩風を吹かせられても困るんですけどwww」「俺らデビューも決まってますし、次のワンマンも即完ですしwww」と、舐めた態度でかかってきます。さすがにこれにはカチンと来たのか、メンバーのひとりが「舐めてんじゃねえぞ!」と詰め寄りますが、推しはだけは何故か落ち着き払って激昂しているメンバーふたりを諌めると、後輩に向かって謝ったのです。そこで今度は推しがふたりに「あんなこと言われて小バカにされて、お前は悔しくないのかよ!」とぎゃあぎゃあ責め立てられるのですが、彼はけろっとこう言うのです。

「でも、本当のことじゃん」

 

推しが演じる役の子は、他メンバーからことあるごとに「なんかズレてる」「プライド無いだろ」「真面目にやってよ」と言われまくってる、ちょっと頭の足りない子です。ダンスをしててもひとりでおかしなアレンジを入れて浮きまくり、スタジオ代はなかなか払えず毎回「ごめん金無い!代わりに払って!」とメンバーに頼み、挙げ句の果てに「夢を追うなら借金もやむなし!」と、消費者金融の返済に追われ、国民保険を滞納しまくるような子です。こう書き出すと3人の中で彼が1番お荷物になってる感じがしますが(何しろ他のメンバーが後輩と火花を散らしてる最中、ひとり呑気にエロ本を読んでいたくらいですから……)一見すると不真面目に見えても、実は誰より1番真面目に「夢だけを追って生きている」のかもしれません。良くも悪くもマイペースだけれど、その分なかなか諦めない。皆が弱音を吐いた時にも「なんとかなるでしょ!大丈夫っしょ!」とへらへら笑う鋼のメンタルを持っている。

《人気の無い奴は目立てない。この世の生き地獄》とは他の舞台の引用ですが、この一言に全てが凝縮されてます。芸歴の長さは強みにならず、先輩だろうと後輩だろうと、目立てる奴がとにかく強い。推しの言葉で激昂していたメンバー達も漸く我を取り戻し、デビューの話をしにやってきたマネージャーに「俺ら、デビューに向かって頑張りますんで!」と意気揚々と宣言しますが……

 

長くなるのでここで一旦区切ります。

この作品がホントにめちゃくちゃ好き過ぎるので、1度に全部は語れませんでした……