人生、難あり

若俳推し活備忘録

1番好きな舞台の話・中編

※こちらのブログは前回エントリーしたブログ(1番好きな舞台の話・前編)の続きになるものです。あらかじめご了承ください。

※レポというよりもはや本編を紹介しているだけです。実際の台詞とかなり異なる場面もあります。

 

「デビューに向けて頑張ります!」とやる気を見せる3人をよそに、何故かひとりでどんよりと沈むマネージャー。そのローテンションさに嫌な予感をひしひしと感じる3人ですが、それと同時にマネージャーと同伴してきた《謎の男》の存在ならびに、彼がやたらと訳知りな口調で会話にちょいちょい突っ込んでくるのも気になります。謎の男は本題をなかなか切り出そうとしないマネージャーに「君の口からきちんと彼らに話すべきだよ」と促すと、自分のことは気にせずどうぞ、と言わんばかりに椅子に座ってくつろぎ出します。

もうこれ以上は引き延ばせない。遂にマネージャーも観念したのか、悲痛な顔で彼らに告げます。「お前らのデビューは訳ありなんだ。想像しているものとは違う」

さて、訳ありのデビューとは一体何か。要約するとこんな感じです。

 

・彼らのデビューは《いずれは解散すること》を前提にしている

・事務所の狙いは《損切り》である為、当然ながら彼らを売り出すつもりは毛頭無い

・ちなみにデビューの場として事務所が用意してきたものは、現在売り出し中の後輩2人のワンマンライブの前座である

・完全アウェーのステージに立たせ、盛り上がらないライブをさせて、完膚なきまでに恥をかかせて、3人に自ら《もう辞めたい》と言い出させるのが事務所の目的

・更にはそれが事務所にとっては習慣のようになっていて、実は彼らのマネージャーも、かつてはアイドルグループとしてデビューを果たしていたものの、損切りをされて芸能界から身を引いたという、衝撃の事実が明らかに……

 

マネージャーの口から明かされる話に思わず顔が強張る3人。それもそうです、あれ程までに待ち望んでいたデビューがまさか損切りとして仕組まれたもので、しかも事務所は自分らのことを「お荷物」扱いしていることまで分かってしまった訳ですから。しかし「ひでえよ……」「こんなのってアリかよ……」と落胆に暮れるメンバーをよそに、推しはここでもマイペースです。いきなりひとりでいつものように「セブン、エイト!」とカウントを始め、いつものように踊り出します。メンバーからは「ふざけてる場合じゃねえだろ!」と怒鳴られますが、とにかくひたすら踊る推し。そしてとうとう「やめろよ!」と静止をされたその時に、推しは初めて声を荒げて、その感情を露わにしました。

「セブン、エイト、の次はなんだ?」

「?……ワン、ツー?」

「そう!ワン、ツー!だ!ワン、ツーが来る!……セブン、エイト、と来たら次はワン、ツー!自然とカウントが続くだろ!自然と身体が動くだろ!」

彼がひたすらセブン、エイト、とカウントを取り、止められても尚踊り続けているのはある意味《何があっても夢を追うのを諦めはしない》意思表示なのかもしれません。自分の中で8拍を刻むこのカウントが聞こえ続けるその限り、決して自らギブアップはしない。ギブアップなどするもんか。……デビューの話に打ちひしがれていたメンバーも、彼の言葉に気を取り直し「やるしかねえか!」と発奮します。すると今までだんまりだった《謎の男》が「思った通りだ」 と意味深に笑い、マネージャーに向かって「この3人のデビューの話、絶対成功させようじゃないか!」と言い出します。

実はこの、マネージャーが一緒に連れて来ていた《謎の男》の正体ですが、マネージャーの飲み仲間である《超有名な凄腕音楽プロデューサー》なのです。飲み屋の席でマネージャーから3人の話を聞かされるうち、彼らにめちゃくちゃ興味が湧いたというこのプロデューサー、彼らの窮地を救うべく、ひと肌脱ぎに来た訳です。「君たちにはもう後が無い。まさに一貫の終わりだね!!」と大笑いするプロデューサーにメンバーも思わずムッとしますが、彼はしれっと続けます。

「そんな君たちのデビューライブが成功したら、事務所もさすがに黙っちゃいない。僕が君たちをプロデュースして、君たちの為に最高の曲を提供しよう!……逆転劇を見せつけて、あっと言わせてやろうじゃないか!」

渡りに舟とはこのことでしょう。まさか世界で活躍している名だたるトップアーティスト達に楽曲提供をしているようなプロデューサーが、自分らの為に曲を作ってデビューを後押ししてくれるとは!消沈していたメンバーもこの展開に狂喜乱舞し「でっかい花火、打ち上げますか!」とあらためて気合を入れ直します。

で、ここからいよいよデビューに向けての策が練られていく訳ですが、プロデューサーは3人のことをよく知る為にも、メンバーのファンと面会したいと提案します。「カロリーの高いファンの意見は積極的に取り入れるべきだ」ということで、急遽彼らの《たったひとりの熱烈なファン》が呼び出されます(ちなみにこちらを演じているのはメンバー内で2番目に若いキャストさんで、当然ながらしっかり女装をしています)

ここで特筆しておきたいのが、この作品に登場してくるキャラそれぞれの設定の濃さです。推しが演じる主人公は勿論、周りを固めるキャラも相当キャラ立ってますが、このファンの子(※以下《Sちゃん》と表記します)の設定が1番凄いというか深いというか、とにかく凄い!の一言に尽きます。はてブロでも以前話題になった『りさ子のガチ恋♡俳優沼』でも「若俳オタクの特徴をよく押さえている」とレポートされていましたが、脚本家の方は私らオタクをひっそりこっそり観察してたりするんだろうか???と思う程、舞台の上でSちゃんが発する台詞はめちゃくちゃリアルなものばかりでしたし、観客席に向かっていきなり「この会場にはあたしなんかよりもっと上の!!!年季の入ってる先輩方が!!!いるんだからな!!!!」と言い出した時には、ガチで言葉を失いました……。

ちなみにSちゃんは所謂普通の《どこにでもいる、一般的なOL》で、メンバーのことはアイドルの頃から追っかけています。Sちゃん曰く「あの3人が私を救ってくれたから」ファンを続けているそうですが、そのあとに続く彼女の言葉は聞いてて結構重かったです。中でも1番ずしりと来たのは、自分自身の存在価値を卑下するような独白をしたそのあとで、ぽつりと零した『誰かの《夢》に寄り添いたい』という台詞。デビューをしても1年足らずで解散し、10年経っても鳴かず飛ばずの状態が続く、推し甲斐なんか全然無さそな3人のことを、何故Sちゃんがここまで必死に応援するのか。ポンコツ過ぎる語彙力なのでうまく言葉に出来ないのですが、Sちゃんにとっては推し活イコール、単なる趣味では片付けられない、大きな意味を持っているんじゃないのかな、と。

例えば新譜の円盤を積む。出演舞台を多ステする。ブロマやパンフは大量に買う。個イベのチェキ会、握手会では可能な限りとにかくひたすら周回をする。それ以外には入る現場にプレボがあればファンレと+αを突っ込んでみたり、ちょっと豪華なフラスタを一基送ってみたり。推し活の形は人それぞれで、目的だって勿論それぞれ異なるけれど、そのアクションが《推しが追ってる夢を叶える》足しになればと思ってやってる部分はあると思うんですよ。私の場合も「推しが再び《かつて演じた某キャラの役》で、舞台の上に立ち上がる日が来るように」と願ってやまない一心で、日々推し活に励みまくっているのですから。だから劇中においてSちゃんが放った台詞の全てに、心の底から共感しました。Sちゃんを演じたキャストの方の迫真の演技も含めて全部、今尚深く印象に残るシーンのひとつだったりします。

 

そしてSちゃんはメンバーそれぞれ違う魅力があるということ、その3人が揃ってることで絶妙なバランスが保てていること、良い楽曲が提供されればきっと人気も出るということ、それらをひたすら熱弁すると「……私が出来るのはここまでだ。あとはプロに、任せます!」とひとこと告げて立ち去ります(ちなみに例の3人ですが、Sちゃんからは見えないところにこっそり隠れて一部始終を見守っていました)

が、Sちゃんからの貴重な意見があれこれ色々聞けたというのに、どういう訳だかプロデューサーとマネージャーは、ふたり揃って難しい顔をしています。何故ならば実はデビューに際する楽曲は既に事務所側から用意をされてて、提供された楽曲は一切、使用を禁じられてるのです。しかもその曲がすごぶるダサい。実際舞台で3人がそれを歌うシーンがありますが、想像以上のキャッチーなダサさと大真面目な顔で絶唱しているメンバー+悟りを越えて虚無に至っているメンバー+ひとりノリノリで踊り狂ってる半ズボン姿のメンバー(推し)のカオスっぷりに、当時は必死で笑いを堪えていたものです。当然歌う本人達も、羞恥は相当あったのでしょう。曲が終わったその瞬間「何なんだよコレーー!!」「親が見たら泣くよコレ!!」「ダサすぎておしっこ漏れそうだよ!」と、悶絶しだす有様です。

マネージャーはそんな彼らに「……これが事務所のやり方なんだよ……」と呟くと、遠い目をして語り出します。大恥をかいたラストライブのトラウマで、それからずっと人前で歌うというのが出来なくなってしまっていること。芸能界から身を引いたものの、追っていた夢を諦めきれずにマネージャー職に就いていること。ひたすら夢を追い続けるか、それとも途中で追うのを止めるか。25歳になった時、その1次選考が来るんだ、と。

……重いです……めっちゃ重いですこの台詞……いずれいつかはそういう時が来るっているのはわかっちゃいますが、今はあんまり考えたくない……

多分舞台を観に来た方のほぼ全員、芝居を観ながらそれぞれの推しの《25歳を迎えたあとのこれから先》を思って重い気持ちになったんじゃないかと思います。実際私もこのあたりから、観ていて結構しんどかったです。しかしこのあと、更にしんどいシーンが来ます。そう、この物語の核心を担う役だといっても過言ではない、マネージャー及び事務所のお偉い方々に、フォーカスを絞ったシーンです。

 

 

このだらだらとした謎レポも、次で漸く最後になります。読み物としては面白みもなく、ただただ長いだけですが、ご迷惑でなければあともう少しだけ、引き続き宜しくお願いします。

 

でもってついでに閑話休題的な話も少し。

以前ブログで《推しの属する小劇団の公演チケットがなかなか売れないもんだから運営がおかしな企画を立てて来た》ことについての愚痴や文句をかなりだらだら書き綴り、当該舞台を友人知人に観に来て欲しいと頼みまくって推しの名義でチケットを取った、というのもちらっと書きましたけれど、招待をした友人達が「予想以上に面白かった!」「あの推しくんがのびのび芝居をしているところが観られただけでも収穫があった!」と観に行ったその日にお礼と舞台の感想のLINEを、忙しい中わざわざ送ってくれましてですね……むしろこっちがお礼を言いたいくらいでしたよ本当に……

で、多少のお世辞が含まれてるのは勿論わかっているんですけど「機会があったら別の舞台も是非観てみたい!」と皆が言ってくれた気持ちに感謝を込めて、そして小劇団の布教もさりげに兼ねる形で、当該舞台の円盤予約(前払い制)とこの作品の円盤をがっつりしっかり、人数分は買わせていただきました訳です。正直言って【楽しく観られる】作品だとは言い難いですが、招待をした友人知人は彼らと同じ《一芸(=才能)で生活を立てている》側で生きていて、ある意味彼らに1番近い立場の方だと思うので、恐らくきっとこの作品の魅力とそしてメンバー達の作品にかける覚悟だったり真剣みさを、誰より1番深くじっくり、わかっていただけるのではないか?と思い、一方的にプレゼントしました。まあそうしましたら予想以上に大好評でして、ツイッターでも「この劇団の作品を初めて見るんだけども何がオススメ?と聞かれたらまず間違いなくコレを勧めます」「これは劇団の代表作と言っても過言ではない。それくらい良かった」と大プッシュしまくりしてくださいまして、お陰で時々その方を介して劇団のことを聞いて下さる方も増え、誠に有難い限りです。

私は敢えてここでは当該劇団ならびに推しの名前は出さない姿勢を示していますが、もしこのブログを見てくださってこの作品にちらっと興味が沸きましたなら、新宿渋谷、池袋あたりの小劇場で活動している集団なので、1度是非とも彼らの芝居を観にお越しください。過去作品の円盤も全て、物販で入手出来ますので……