人生、難あり

若俳推し活備忘録

1番好きな舞台の話・後編

※こちらのブログは前エントリーの前編・中編の続きになります。

※レポというより大筋の話に感想を交えて書き綴っているものなので、実際の台詞とかなり異なる部分があります。ご了承ください。 

※前編・中編で『副社長』と表記していた役が『専務』の間違いだったことに今気付きました。

 

 

場面は変わり、あの3人のデビューライブが間近に迫ったところに話は進みます。社長とそれから専務のふたりが事務所の一室(恐らく社長室)に揃ったところへマネージャーが真面目な顔して乗り込んで来たその瞬間、空気は一気に凍りつきました。専務は彼に向かって厭味ったらしく「もうすぐだよなあ?デビューライブ!社長共々、楽しみにしてるよ〜?」と言いますが、マネージャーはそんな専務をキッとした目で睨め付けると「やめろ、ニノ」と《アイドル時代のニックネーム》で彼の発言を諌めます(※突然のバレで申し訳ありませんが、専務の名前は『二宮』といいます)

実は専務、かつてはこちらのマネージャーと同じくアイドルだった過去があり、しかも一緒に活動していた《あのグループ》のメンバーだった、という訳です(ちなみにここのシーンが始まる直前、ことごとく空気の読めない推しによって専務=マネージャーの同期、というのは既にバラされています)当然専務は「……その呼び方、やめろ」と静かに怒りを露わにしますが、マネージャーは怯むことなく「俺から見ればこんなのただの、自傷行為に過ぎません。頼むからもう、あいつらに昔の俺たち重ねて、痛めつけるのやめましょうよ!俺たち恥もかいたけど、それでもやるだけやったでしょう!そろそろ前を向きましょうよ!」と、思いの丈をぶつけます。そして黙ってそのやり取りをじっと見ていた社長にも、彼は「ねえそうでしょう、社長……いや、チーフマネージャー!」と言い、そして「あなたが情熱を注いだかつての俺たちグループは、もう30代も半ばなんですよ!叶わなかった願いを、そろそろ受け入れましょうよ!」と悲痛な叫びをぶつけます。

しかし社長は顔色ひとつ変えることなく「確かにお前の言う通り、オレらのやってることは自傷行為だ」とあっさり肯定してしまいます。昔の自分が味合わされた、上層部からの損切りという非情な仕打ち。強制的に握り潰されてしまった、彼らと共に追っていた夢。社長と専務が不遇にめげず抗おうとする3人のことを「目障りだ」と言い、よってたかって彼らの夢を潰しにかかってくるのは、このふたりだけが何年経っても未だにずっと《夢を叶えられなかった》ことについてを引きずり続け、現実という圧に打ちひしがれるアイドルの末路を見ることによって「誰であっても結果は同じ。こうなることは決まってたんだ」「だからあの時ああなったのも結局のところ不可抗力で、仕方のないことだったんだ」と、無理矢理納得させているからなんだろうかと思えます。そしてマネージャーから「こんなやり方、いびつすぎます!他にももっと、うまいやり方がある筈でしょうが!」と反論されて「これ以外思いつかねえんだよ!!」と思わず激昂する社長……チーフマネージャーから社長のポストに就いても今尚後悔に苛まれ続け、やられたことをやり返すような復讐劇を何度も何度も繰り返しても、気持ちが全く晴れないどころかむしろ自ら心の傷を広げていってしまっているのが、このひとことに表されていました。

そして専務も彼と同じく、昔見ていた《夢》に囚われ続けています。いつになったら前を見るんだ!とかつての仲間に叱責された専務がふ、と遠い目をして「夢に見なくなったら、かな〜?」とぽつりと呟き返すシーンは何回観てもグサグサ来ます。

「お前は見ないの?ステージの上から大勢の客が埋まった観客席を見て、デッカいハコを揺らす夢。……俺はまだ、見るけどね」

 

ちなみに円盤収録されてる特典映像で《専務》を演じたこちらのキャストさんは「嫌な役回りですよ。言ってる自分が辛くなるよな台詞もあるし、メンバーに対して言うのも辛い。色々考えちゃいますよね」と、複雑な心境を吐露していました。某男性シンガーも以前『役者というのは自分を失くして《自分ではない人間》の生を演じること』だと言ってましたが、恐らくキャストの誰もが皆、自分と自分の演じる役が別物だとはわかっていても、ふとした台詞に自分のことを重ねてしまって辛くなったり色んなことを考えたりして、葛藤しながら芝居に臨んでいたんじゃないかと思います。

例えば今の自分の立ち位置。目指した座標とそこまでの距離。夢とビジネスの相関関係。背中合わせの理想と現実。専務が訥々と己の思いをマネージャーに語り「お前はもう、夢に見ねえの?」と問いかけていたここのシーンは観客席のほぼ全員、涙腺崩壊してました。

 

そして専務の独白が終わり、マネージャーが部屋を立ち去る間際にひとこと「あいつらの逆転劇、あんたらに見せてやりますから」 と社長と専務に告げたのち、舞台はいよいよ最後の場面に移ります。プロデューサーから事務所の悪意がふんだんに詰まったあのデビュー曲を隠れ蓑にし、メンバー3人が自ら作詞した曲を《真のデビュー曲》としてサプライズ披露する計画を明かされていたメンバーですが、作詞に励む最中に「ホントに上手くいくのかよ、コレ」と不安を吐露していたのがまんまと的中し、遂に迎えたデビュー当日、オープニングアクトを務めたもののあまりのダサさに会場のお客のテンションは下がり、早く引っ込め!と言わんばかりの雰囲気の中で「実はもう1曲あります。僕達の真のデビュー曲です!聴いてください!」と発表しますが案の定、盛大にブーイングされてしまいます。

四面楚歌ともいえる状況。困惑の顔でうろたえるメンバー。しかしひとりのメンバーが「いいから聴けよ!」とブチ切れたことをきっかけにして、メンバーそれぞれ自分の言葉で自分の想いを打ち明け出します。何度もデビューを繰り返しつつも、10年近く鳴かず飛ばずであったこと。それでもいつかは夢が叶うと3人でずっと頑張ってきたこと。最後のチャンスになるこのステージをどうか見届けて欲しいこと。3人全員うっかりすると泣きそうになるのを必死に堪えて「この曲には、僕たちの人生がかかっているんです!」「どうか5分だけでも、皆さんの時間を僕らに貰えませんか!」「聴いてください、お願いします!」と頭を下げると、その懸命さに観客席からまばらな拍手が起こりました(実際はSEの拍手ですが)

なおこのシーン、千秋楽では3人揃ってボロ泣き&咽喉が詰まって台詞がマトモに言えないくらい、感極まった状態でした。推しに至っては楽日しか観てない私ですらも「あ、今の台詞はアドリブだな」とわかるくらいに素が出てましたし(実際カテコで他メンバーから「お前途中から完全に自分のことを言ってただろ!」「アドリブ長すぎんだよ」と突っ込まれてました)まんまるにした目からはポロポロ大量の涙が零れまくってて、観ているこちらもつられて号泣しちゃいましたよ……。

皆の応援があるから自分はこうして舞台に立ててる。いつまでもこうして立ち続けたい。与えられた役として、舞台の上で生き続けたい。推しはちょいちょいツイッターなどでも役者の仕事に賭ける想いを呟くことが多いのですが、文字で見るのと直に聞くのじゃ、刺さる深さが違いますよね。自分の仕事を支えてくれてる現場の方への感謝の言葉、そして自分を応援しているファンへと向けた感謝の言葉を泣きじゃくりながら役に重ねてひたすら述べる推しの姿を見ている間、私は初めて推しの名前を知った当時のあの頃のことをぼんやり思い出しながら、ひたすらティッシュで涙をぐしぐし拭ってました。

 

そして場面はライブが終わった3人が控え室(?)にて放心しているシーンに移り、抜け殻のようになった3人が「終わったな」「終わっちゃったな」「こっから俺たち、どうなるかだな」と口々に呟きます。

やり切ることはやり切った。思いの丈は全てぶつけた。しかし推しだけは片隅でひとり頭を抱え、おかしいなあ、おかしいなあ、と辛そうにぶつぶつ繰り返します。推しの異変に気付いたメンバーが「どうした?」と声をかけますが、推しはそれでもなかなか顔をあげません。そしてメンバーが首を傾げる中、推しはひとことこう言ったのです。

「……ワン、ツー、って出てこねえんだ。どれだけ耳をこらしても、次のカウントが全然聞こえてこねえんだ!」

今までどんなに辛くても、先の見えない状況においても、あのカウントが聞こえる限りは何があってもギブアップしない。そうして自分と自分の仲間を鼓舞し続けてきたあの推しが、ここで初めて弱音を吐いて「ダメかもしれない」と言いました。今までこんなことはなかった、どうしよう、どうすればいいんだよ……と泣きそうな顔でうなだれる推し。するとふたりのメンバーは「もういっか」「そうだな」「オレ達にしちゃ、頑張ったほうじゃね?」「よく頑張ったよなオレ達ホント。なんてったって10年だもんな!」「だな!」と、何故かめちゃくちゃ晴れやかな顔で《終わり》を匂わす会話をします。それに思わず顔を上げ、どういうことだ?と言いたげにふたりを見る推しに、ふたりは優しくこう告げました。

 「オレ達さ、もしもお前が『もう無理だ』って弱音を吐いたら、その時はきっぱり終わりにしようと思ってたんだよ」

「俺たち甘っちょろいからさ、お前のことを勝手に砦にしてたんだ。……お前がずっと頑張ってたから、もうちょっとだけ踏ん張ろう!って思ってたんだ」

「ありがとうね。……もう、充分だよ」

ふたりの言葉に泣きじゃくりながら「ごめんなあ……ホントごめんなあ……」と繰り返す推し。そしてリーダーの子が「おい!謝るの禁止な!」と手を差し伸べて、終わりを促す握手を推しに求めます。そして3人が握手を交わし、涙を拭って《夢の終わり》を確信するかのように視線を合わせたその瞬間、舞台端からプロデューサーとマネージャーが「お前らやったぞ!!!!」と絶叫しながら3人のところに飛び込んできたのです。思わず固まる3人に向かい、興奮気味に「逆転劇が起こったんだぞ!」と彼は叫ぶと、続いて皆にこう言いました。

「お前らの歌ったあの曲が反響を呼んで、あの曲で!デビューが!決まったんだ!!」

当然ながら3人全員目を丸くして「嘘だろ……?」「えっ何待って、嬉しすぎてワケわかんない……」と、デビューの話を信じられずにうろたえる始末。すると「ダメだこいつら、デビューの話が嬉しすぎてパニくってる!なあニノ、お前からも説明してやって!」とマネージャーから促された専務がふらりと前に出て「え〜、会社の偉い人で〜す。……君たちのデビューが、今さっき、決まりました〜」といつもの口調で説明を始め、そして最後に優しい顔でにこりと笑って「これ、現実です」と言いました。

 

私ホントにこの作品を何回観ても観る度何度も涙ぐむんですが、ここで一気にぶわーーーっとなります……初めはとにかく存在自体がムカついていた専務でしたが、終盤で吐露した《諦めきれない夢にすがり続けるしかない闇》が漸くこの時晴れたんじゃないかと思わせる笑顔になった瞬間、専務ーーーー!!!専務良かったね専務ーーーー!!!と胸が一杯になり、その後見せるマネージャーに向けた笑顔にまた号泣します。いやもうホントにいい役でしたし、いい演技でした……

 

そして最後は再びレッスンスタジオの風景に戻り、デビューが決まったその後の話が挟まります。3人はあの後デビューをしたものの、結局それから鳴かず飛ばずのままは変わらず、レコードショップの500円ワゴンに新譜を置かれる状態です。しかし以前と違うのは、やっぱり推しがいつものように「何とかなるでしょ!」と能天気に笑い、それに呆れたふたりが「また始まったよ」「いっつもそれだよ」とぼやいているのを、専務が笑って「え〜でも〜、先行投資ってことでよくな〜い?」と片付けていることです。

結果的にはデビューを果たして大成功!念願叶ってトップアイドルになりました!……という未来は描かれませんでしたが、がむしゃらに夢を追い続けてきた3人と、叶わなかった夢の呪縛に囚われ続けた3人の、それぞれが見る《未来》のビジョンが決して先の明るいものではなくとも、夢が破れて悲しいものに終わってしまうエンドを迎えるわけではなさそうなことに、個人的には舞台を観終えて安堵しました。そしてよくあるサクセスストーリー的な大円団にて終幕するのを選ばなかったこの物語に、むしろ私は心地よさすら感じ入りました。

演じる役者の《等身大》を描いた舞台というのは、簡単な言葉で片付けてしまえば「観客側は非常にラクに役者と役に感情移入が出来てしまって、頭を使わず笑って泣いて感動出来る」ものになるので正直苦手としていましたが、この作品は観ていて色々自分のことにも当てはまる部分が多すぎて、観返す度にしんどくなるのはわかっていても、やっぱり好きでヒマさえあれば観てしまいます。日程の都合で千穐楽しか観られなかったのが今でも非常に悔しいですが、あの1公演をきちんとこの目で見届けられただけ、FC先行で完売してはいたものの、運良く流れた未入金分のチケットを取れたラッキーに感謝をしたいと思います。

 

そして最後に。

アップするまでに1ヶ月以上の時間がかかってしまいましたが、以前に上げたエントリーを読んで続きを待って下さった方がもしいましたら、本当にありがとうございます。クソ長い割には面白味の無い1人語りのブログですけど、暇潰しにでもしていただけたなら嬉しいです。