人生、難あり

若俳推し活備忘録

《満員御礼》は当然じゃない話

つい先日の話になるが、3ヶ月振りに推しの舞台を観に行った。相当前にリリースされた、とあるゲームが原作の舞台だ。

その作品への出演告知がなされた時は、正直な気持ち思わず「エッ……」と思ってしまった。「エッ……」と思った理由のひとつに『原作ゲームのジャンルが苦手』というのがあった。そしてそれからもうひとつ、超個人的な理由になるが『かつて観に行った同系統のジャンルの舞台が面白くなかった』というのもあった。そういうわけでクソなオタクは期待と不安を半々に募らせ、しかしそれでも行ける限りのチケットを取り、そのあと更に追いチケをかまし(※ただし、特典欲しさに友人招待と称した追いチケ)舞台の上に立ち上がる推しを観たいが為に、某劇場に足を運んだ。

率直な言葉で結論を述べると、多ステの価値は充分にあった。全面的に悲壮感が漂うストーリーではあったもの、要所要所で緩急が適度についていたのと各種設定の説明演出が非常にスムーズだったので、原作ゲームを知らないオタクも置いてけぼりにはならずに済んだし、泣かせの場面は素直に泣けた。多分恐らくバ◯ロワ世代のオタクだったら、めちゃくちゃ好きな内容だと思う。アクションシーンのクオリティも高く、キャストの方が公演毎にぶち込んでくる日替わりアドリブも決して悪ノリが過ぎること無く、シリアスな場面とコミカルな場面のスイッチもきちんと切り替わっていて、公演回数が少ないことを久々に『惜しい』と思った舞台だったと、私は思った。

 

が、残念なことにこの舞台──楽日を除く平日公演ならびに土曜の公演で、空席がめちゃくちゃ目立っていた。クソなオタクが入った日などは後ろの座席が2列に渡ってほとんど無人という状態で、自分の背後を振り返り見るのが正直マジで辛かった。多分恐らく私らよりもそれを見るのがキツかったのは、キャストの方々だろうと思う。舞台の上から入りのまばらな観客席を見た時に感じるガッカリ感はクソなオタクも仕事で何度か味わってるので、せめてカテコは晴れやかな顔で締められるようにと、めちゃくちゃ必死に拍手を送った。

思えば舞台の上演期間はチケットがなかなか取れないことで有名な舞台が他にもあって、しかもその上全ての舞台の千穐楽が同日という状況だった。キャストの方が自虐交じりに「作品名がSNSでトレンド入りして嬉しかったけど、その割には……ねえ……?」と言うのに対して客席からは渇いた笑いが起こっていたし、そのキャストさんが大楽のカテコで「某ソシャゲでもなく、某漫画でもなく、この舞台を選んで観に来てくださった方々に感謝します!」と述べた瞬間、殆どの人が大笑いしていた。これで楽日の2公演までもが空席だらけの状態だったら正直言って笑えなかったが、前楽大楽どちらの回でも客席はほぼ埋まっていたので、チベスナ顔にはならずに済んだ。また、大楽のカテコでびっくりするほどはしゃぎまくってた推しの姿に、心の底から安堵した。クソなオタクが観に来た中で、この日の推しが1番めちゃくちゃ楽しそうだった。近くのキャストにちょっかいをかけては大爆笑する推しは完全に《素》の推しだったが、外部の舞台でそういう推しを見るのはなかなか無いことなので、内心めちゃくちゃホッとしてしまった。

 

記事タイトルでも記しているが、余程の大きなタイトルの舞台で無い限り《満員御礼》は当然のものでは決して無いのだ。当日券が出ないというのはある意味とても喜ばしいことで、観客席がオタクでぎっしり埋まっているのも、当然だけど当然じゃない。もしかしたらば平日の回が物の見事にスッカラカンなら千穐楽もスッカラカンである方が、実は案外《当然》なのかもしれないのだから。

が、座長の方が中日のカテコで「演劇の持つ力を信じている」と仰っていたその通り、最後の最後でそれは見事に発揮が成された。単に楽日のチケットだけしか取らない勢が多かっただけかもしれないけれど、クソなオタクが見た限りでは楽日の回を当日券で入ったお客もいたようだったし、中にはそれが初見だという方もちらほらいたようだった。もしかしたらばそういう方の中にはまさに《たまたまヒマで予定も無くて、近場で観られる舞台があるなら軽率に足を運んでみよう!と思っていたら、トレンドに入ってる舞台の楽日がちょうど今日だし当日券もあるようだから、ちょっと舞台を観に来てみた》というような方がいたかもしれない。たまたま身体が空いていて、たまたま舞台を観ようと思い、たまたまチケットに余裕のあった舞台を見つけ、あるいはたまたま友人に誘われ、決して安い値段ではないチケットを手にして、座席に座った。これはある意味、奇跡だと思う。過去エントリーでもちらっとネタにはしたけれど、金と時間を大きく費やすこの趣味は、時として非常に残酷な面のある趣味だ。推しが出ている舞台といえど、そうそう何度も観に行くことは出来ないし──友人知人に舞台のチケをプレゼントして「推しの芝居を観に行って欲しい」と頼むのだって容易じゃない。しかしそれでもあの会場に通って舞台を観、そして毎日公式タグで舞台の感想をツイートしていたオタクの熱意と、そんなオタクの推してる推しの舞台に賭ける熱量が、あの日の景色を作り上げるに至ったのだと、クソなオタクは確信している。

そういう意味でも今回の舞台は、何度も観に行くその価値はあった。願わくばまた、来年あたり。キャス変無しで次章の公演が決まりますように。

 

ちなみに舞台の終演後、推しを含めた出演キャストの方の一部でハイタッチ会が開催された。クソなオタクは毎回いっつも推しに向かって「お疲れ様っしたー!」と声をかけたら光の速さで自ら剥がれていくのだが、この時だけはちょっとひとこと添えてみた。果たしていつものクソなオタクとわかった上での反応かどうかはわからんが──その瞬間に顔が真っ赤になるくらいには、嬉しく思ってくれたのであれば有難い。

照明のせいかもしらんけど。